ある日、案件34件のステータスが勝手に巻き戻った — スプレッドシート管理をやめて、社内ポータルを自作するまで

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AI活用業務システム内製化

こんにちは、Harryです。シンガポールでforCreatorsという会社をやっていて、TikTok Shop向けのEC動画をつくっています。

3月に「動画制作フローの60%をAI化した話」というnoteを書きました(※リンク)。あれから4ヶ月、現場でやってきたことを、今日から1日1テーマずつ書いていきます。

初日は制作の話……ではなく、その土台の話から。案件管理のスプレッドシートをやめて、社内ポータルを自作した話です。

ある朝、案件34件が勝手に巻き戻っていた

ダッシュボードを開いたら、「編集完了」まで進んでいたはずの案件が「撮影中」に戻っていました。1件じゃなく、34件

犯人はバグではなく、設計でした。

当時うちは、進捗の記録場所が2つあったんです。昔から使っているスプレッドシートと、作りかけのデータベース。シートからDBへ定期的に同期する仕組みが、DB側で更新された最新の状態を、古いシートの内容で上書きしていた

「真実がどこにあるのか」を決めていないシステムは、いつか必ずこれをやります。二重真実源(two sources of truth)問題ですね。教科書で読むのと、自社の案件34件で食らうのとでは、学びの深さが違いました。

そもそも、スプレッドシート管理は限界だった

事故の前から兆候はたくさんありました。

  • スタッフ31名分の稼働記録が、いつのまにか3つの異なるフォーマットに分裂していた(人によって記録の形が違う)
  • 全体を集約するはずのマスター台帳は、エクスポートの過程で壊れていて、実は使いものにならなかった
  • 「あのブランドの動画、誰が何本作ったっけ?」に答えるために、シートを何枚も開いて目視で数えていた

スプレッドシートが悪いわけじゃないんです。ただ、制作本数が増えて関わる人も増えてくると、「みんなが自由に書ける」というスプシ最大の長所が、そのまま「形式が守られない」という短所に反転します。

つくったもの:社内ポータル

というわけで、Next.js+Supabase(データベース)で社内ポータルを内製しました。いま動いている中身はこんな感じです。

  • 案件940件をDBで一元管理
  • 進捗は上書きではなく追記型のイベントログで記録(状態遷移1,976行)。「いつ・どの工程からどの工程へ動いたか」が全部残る
  • 進捗ダッシュボード:どの案件が、どの工程で、何日止まっているかが一目で分かる
  • 案件横断検索:「あのブランド、誰が何本」が3秒で出る
  • スタッフ16名それぞれのマイページ:自分の案件・実績・打刻
  • 権限分離:金額情報は管理者だけが見える

移行して分かった、本当の意義

正直、作る前は「シートが綺麗に片付く」くらいに思っていました。実際に効いたのは、もっと深いところでした。

① 真実がひとつになった

いまはDBが唯一の真実で、シートは残っていても「入力・確認のUI」でしかありません。34件巻き戻り事故の根本対策は、同期処理を賢くすることではなく、真実の置き場所を1つに決めることでした。

② 業務データが「AIに読める形」になった

これが一番大きいです。

スプレッドシートは、人間が読むための形式です。DBは、AIが読める形式です。

案件データがDBに入った瞬間、「今週の進捗をまとめて」「止まっている案件はどれ」「来週のアサイン案を出して」が、ぜんぶAIに任せられる射程に入りました。進捗報告・アサイン・滞留検知——管理業務と呼ばれていたものの多くが、です。

AI活用というとモデルの性能の話になりがちですが、実務ではその手前、自社の業務データがAIに読める形になっているかのほうがずっと効きます。

③ 属人化が解けた

「その数字、あの人のシートにしかない」が消えました。記録のフォーマットはシステムが強制するので、3フォーマット分裂のような事態は構造的に起きません。

④ 「誰に何を見せるか」を設計できるようになった

スプシの共有は基本オール・オア・ナッシングです。ポータルなら「スタッフは自分の案件と実績まで、金額は管理者のみ」という設計ができます。全員に開きつつ、開きすぎない。

一番言いたいこと:これ、非エンジニアが作りました

僕はコードが書けません。いまも書けないままです。

このポータルは、SaaSを契約したのでも、開発会社に外注したのでもなく、Claude Codeに要件を日本語で説明しながら、自分で作りました。もちろん一晩ではできていなくて、34件巻き戻りみたいな授業料も払いながら、数ヶ月かけて育ててきた結果です。

それでも確信を持って言えるのは——業務システムは「買うもの」から「AIと一緒に育てるもの」になった、ということです。

自社の業務に100%合うSaaSは存在しません。でも、自社の業務に100%合うシステムを自分で育てられる時代は、もう来ています。

明日は、このDBの上で回っている制作パイプラインの話。TikTok EC動画を量産する「制作工場」の中身を全部見せます。

—— Harry(@imharry_so

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